渡航者医療センター
海外感染症流行情報
海外感染症流行情報(2024年6月号)
東京医科大学病院 渡航者医療センター
●全世界: COVID-19とインフルエンザの流行状況
COVID-19の患者数は、6月に入り欧米諸国や日本などで増加傾向にあります(米国CDC 24-6-21、ヨーロッパCDC 24-6-14、厚生労働省 24-6-21)。台湾、マレーシア、タイなどのアジア諸国でも患者数の増加がみられます(ProMED 24-6-18,19)。これから北半球では、COVID-19の夏の流行期に入るものと考えます。インフルエンザについては、南半球の温帯地域でA型の流行が発生しています(WHO influenza 24-6-23)。オーストラリアや南アフリカでは昨年と同等の患者数ですが、南米のチリなどでは増加しています。
●アジア: デング熱流行状況
東南アジア各国でデング熱の患者数が昨年よりも増加しています(WHO西太平洋 24-6-13)。米国CDCは、インドネシア、シンガポール、ラオス、カンボジアを例年より患者数の多い国にリストアップしました(米国CDC 24-6-20)。南アジアでもスリランカ、バングラデシュで患者数が増加中です(ProMED 24-6-21)。なお、今年はオーストラリアでもデング熱の患者数が1000人と、例年の2倍の数になっています(WHO西太平洋 24-6-13)。また、サモアやフィジーなど、太平洋の島国でも例年より多い患者数が報告されています。日本ではデング熱の輸入例が6月中旬までに88人で、昨年同期(31人)の倍以上になりました。
●アフリカ: コンゴ民主共和国のエムポックス流行
アフリカ中部のコンゴ民主共和国では23年9月からエムポックス(サル痘)の患者が増加しており、今年5月末までに患者数は7851人、死亡者数は384人になりました(WHO 24-6-14)。同国で流行しているエムポックスの病原体は、22年から世界流行しているウイルスと別系統のウイルスで、致死率がより高くなります。当初は性行為などで拡大していましたが、最近は患者との接触による子どもの感染が増えており、現在の患者の4割近くは5歳以下の小児です。他国への流行拡大はみられていませんが、WHOは監視を強化しています。
●北米: 米国で鳥インフルエンザH5N1型の3例目発生
米国ではウシの間でH5N1型ウイルスの流行が発生しており、病牛を処理した労働者への感染も報告されています。5月には3例目の患者がミシガン州で発生し、オセルタミビルの服用で改善しました(米国CDC 24-5-30)。今までの患者は結膜炎のみでしたが、今回の患者は発熱や急性呼吸器症状がみられています。いずれの患者も、病牛を処理する際に十分な感染防御措置をとっていませんでした。
●中南米:: メキシコで鳥インフルエンザH5N2型の患者発生
今年4月にメキシコシティで、59歳の男性が鳥インフルエンザH5N2型に感染し、死亡しました(WHO 24-6-5)。メキシコでは家禽などの間でH5N2型ウイルスの流行が起きており、この患者は病気の家禽から感染したとみられています。H5N2型のヒトへの感染例は今回が初めてです。
●中南米: デング熱患者が急増
中南米では6月中旬までにデング熱の患者数が930万人まで増加し、昨年の年間累積患者数(460万人)の2倍になりました(米州保健機関 24-6-18)。このうち4500人以上が死亡しています。ブラジルなど南米の患者数が大多数ですが、メキシコ、グアテマラなど中米諸国でも6月になり患者数が増えています(英国NaTHNaC 24-6-20)。
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