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渡航者医療センター

海外感染症流行情報

海外感染症流行情報(2025年12月号)

東京医科大学病院 渡航者医療センター

全世界: インフルエンザの流行状況

アジア、ヨーロッパ、北米など北半球の温帯地域でインフルエンザの早期流行が発生しています(WHO global influenza program 25-12-25)。ウイルスの種類はA(H3N2)型が大多数で、サブクレードKと呼ばれる変異株が主流になっています(WHO Disease outbreak news 25-12-10)。このウイルスは病原性に変化がなく、ワクチンによる重症化予防効果も従来のウイルスと同等とのことです。

全世界: COVID-19の流行状況

12月は世界的にCOVID-19の流行が収束状態にあります(WHO COVID-19 dashboard 25-12-7)。検出されているウイルスの種類は、欧米ではXFG型が多く、日本などアジアでは今年夏に流行したNB.1.8.1型が引き続き多くなっています。また、22年に流行したBA.3系統のウイルスがやや増加しており、WHOは監視を強めています(WHO Tracking SARS-CoV-2 variants 25-12-5)。北半球の温帯地域では、年明けからCOVID-19の流行が再燃する可能性があり、引き続き注意が必要です。

アジア: デング熱の流行状況

東南アジアでのデング熱の流行は収束に向かっていますが、マレーシアやインドネシアなどでは媒介蚊の多い季節が続くため注意が必要です。(WHO西太平洋 25-12-11)。なお、米国CDCの報告によれば、25年はアジア太平洋地域の中でも、ベトナム、フィリピン、サモアで患者数が例年より多かったとのことです(米国CDC Traveler’s Health 25-12-23)。

アジア: 中東でのMERSの流行状況

25年はMERS(中東呼吸器症候群)の患者が世界で19人発生し、4人が死亡しました(WHO 25-12-24)。このうち17人はサウジアラビアで発生しており、首都リヤドからの報告数が10人と多くなっています。また、11月にフランスから中東に渡航した旅行者2人が、帰国後にMERSを発病しており、滞在中、ラクダに接するなどのリスク行為のあったことが確認されています。

アフリカ: エチオピアでのマールブルグ熱の流行

エチオピア南部で発生しているマールブルグ熱の流行は12月も続いており、患者数は17人で、このうち12人が死亡しました(ヨーロッパCDC 25-12-19)。エチオピアには日本からの直行便が就航しており、同国を観光などで訪れる際は、流行地域である南エチオピア州には立ち入らないように注意してください(外務省海外安全ホームページ 25-11-18)。

ヨーロッパ: 東欧でのA型肝炎の流行

今年になりチェコ、スロバキア、ハンガリーなどの東欧諸国でA型肝炎の患者数が増加しています(ヨーロッパCDC 25-11-28)。患者はホームレスやジプシーなど貧しい人に多く、10月までに6000人以上の患者が発生したとの報告もあります(ProMED 25-11-30)。こうした国々に日本から渡航する際には、A型肝炎ワクチンの接種を受けることをご検討ください。

ヨーロッパ: フィンランドでダニ媒介脳炎の患者が増加

北欧のフィンランドでダニ媒介脳炎の患者数が増加しています(ProMED 25-12-5)。25年は11月までに227人に上っており、首都ヘルシンキ近郊などでも患者が発生しています。ダニ媒介脳炎のワクチンは日本でも販売されており、同国への渡航者で野山に立ち入る機会のある人は、出国前にワクチン接種を受けておくことを推奨します。

北米: 米国で鳥インフルエンザの患者が発生

米国ワシントン州のシアトル近郊で、11月に鳥インフルエンザウイルスH5N5型の患者が1名発生し、死亡しました(WHO 25-12-5)。H5N5型のヒトへの感染は今回が初めてのケースで、家禽から感染したと推測されています。

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