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渡航者医療センター

海外感染症流行情報

海外感染症流行情報(2025年11月号)

東京医科大学病院 渡航者医療センター

全世界: インフルエンザの流行状況

今年は東アジア、ヨーロッパ、北米など北半球の温帯地域を中心にインフルエンザの早期流行が発生しています(WHO global influenza program 25-11-19)。ウイルスの種類はA(H3N2)型が多く、英国のデータによれば従来のJ系統からK系統に変異が見られるとのことです(ヨーロッパCDC 25-11-20)。米国CDCの報告でもK系統の検出が多数を占めています(米国CDC 25-11-13)。この変異が早期流行の一因とされていますが、病原性には変化がなく、ワクチンによる重症化予防効果も従来のウイルスと同等とのことです(ヨーロッパCDC 25-11-20)。なお、現在、東南アジアでもA(H3N2)型のインフルエンザの患者数が増加しており、これもK系統によるものとみられています(WHO global influenza program 25-11-19)。

全世界: COVID-19の流行状況

11月は世界各国でCOVID-19の流行が収束傾向にあります(WHO COVID-19 dashboard 25-11-2)。ウイルスの種類は、今年夏に流行したNB.1.8.1型(通称ニンバス)からXFG型に置き換わりつつあり、日本で今年の冬に流行が再燃する場合は、この型が拡大すると予想されます。

アジア: デング熱の流行状況

東南アジアや南アジアではデング熱の流行が収束に向かっており、25年の患者数は昨年と比べて同等かやや少ない状況です(WHO西太平洋 25-11-13、WHO南東アジア 25-11-19)。なお、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどの熱帯諸国ではこれからの季節も媒介蚊の発生が続くため、引き続き注意が必要です。

アフリカ: エチオピアでマールブルグ熱の患者発生

エチオピア南部のジンカでマールブルグ熱の患者が6人発生し、3人が死亡しました(WHO 25-11-21)。これ以外に33人の疑い患者が検査中です。エチオピアは日本からの直行便が就航しており、外務省は「南エチオピア州への渡航を控えるように」との勧告を発出しました(外務省海外安全ホームページ 25-11-18)。マールブルグ熱はエボラ熱と近縁のウイルスで起きる出血熱で、エチオピアでは初めての患者発生になります。

アフリカ: ケニアでコレラの流行が発生

ケニア南部のナロクで10月からコレラが流行しており、11月中旬までに200人以上の患者が確認されました(英国National Travel Health Network Center 25-11-21)。死亡者は6人にのぼっています。ナロクは首都ナイロビから観光地のマサイマラまで陸路移動する際の経由地であり、この町周辺では飲食物に十分注意する必要があります。

北米: カナダで麻疹の流行が続く

カナダでは昨年から麻疹の患者数が増加しており、今年は5000人以上にのぼっています(カナダ保健省 25-11-10)。患者の半数はオンタリオ州(州都はトロント)で報告されており、ワクチン未接種の小児の感染が多くなっています。WHOはカナダを麻疹の排除国に認定していましたが、11月に認定から除外しました(米州保健機構 25-11-10)。

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