東京医科大学病院 TOKYO MEDICAL UNIVERSITY HOSPITAL

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漢方医学センター

コラムなど

疲労と漢方薬(2021年10月)

東京医科大学病院漢方医学センター 及川哲郎

 疲労は、痛み、発熱と並んで生体の3大アラームと言われ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号のひとつです。特別に病気などのない人が感じる生理的疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率が一時的に低下した状態とされ、休息を求める欲求と不快感いわゆる疲労・倦怠感を伴うことがしばしばみられます。

 そのような重要な症状にもかかわらず、疲労を訴えても検査で必ず異常が見つかるとは限りません。むしろ「最近ひどく疲れやすい。毎年の健康診断のデータは正常値で、いくつかの病院でも検査してもらったが異常なしと言われている・・なぜだろう、変な病気が隠れているのではないだろうか、不安・・」といった話をよく耳にします。西洋医学では病気を診断する手がかりとして「疲れやすい」「だるい」という症状に注目し、診断がつけばその病気を治療するわけですが、もし診断がつかない場合「疲れやすい」「だるい」という症状自体に対する手立てがないことも少なくありません。一方でそのような場合でも、症状を重視する漢方医学では疲労・倦怠感や疲労に関連した症状に対し、漢方独自の概念で対応できる可能性があります。

 漢方医学の気血水理論では、気は目に見えない根源的エネルギーで人の活動を機能的にささえる、血は血管内の赤い液体である栄養などを通して人を物質的にささえる、水は無色の(血以外の)液体で血とともに人の活動を物質的にささえるとし、これらの失調があると人は病気になると考えます。気血水の失調は、気の失調を中心に疲労につながることが多いのです。そこで気血水の失調を改善する漢方薬が疲労の回復にも役立つわけです。また虚実の考え方も大切です。体質強壮な者を実証、体質虚弱な者を虚証と呼びます。特に虚証タイプでは、西洋医学にない補剤と呼ばれる体に足りない気血を補う漢方薬が有効で、用いる機会が多くなります。

 具体的には例えば、胃腸が特に弱った虚証タイプでは、六君子湯、補中益気湯などで胃腸を整え燃料補給する治療をします。ストレスなどによる興奮・緊張が強いため疲労をきたすタイプなら、桂枝加芍薬湯などで胃腸の活動をリラックスさせたり、半夏厚朴湯などで自律神経バランスを調整するとよいでしょう。一方加齢が関係するタイプの疲労では、八味地黄丸や真武湯など体の新陳代謝を高める漢方薬が有効です。

 もちろん適切な休息や睡眠は基本かつ重要ですが、疲労回復に漢方薬もうまく使ってみてはいかがでしょうか。

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