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低侵襲心臓・血管病治療センター

主な治療方法のご紹介

経カテーテル的大動脈弁留置術TAVIタヴィ: Transcatheter Aortic Valve Implantation)

大動脈弁狭窄症は、心臓の大動脈弁が狭くなり、正常な血液の流れが妨げられる状態です。これにより息切れや胸の痛み、めまいなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすだけではなく、命に関わる病気です。

大動脈弁狭窄症に対しては、胸骨正中切開あるいは右開胸で心臓に到達し、人工心肺装置を用いた心停止を要する手術治療が一般的です。しかし、現在ではより負担の少ない治療法として、ご高齢の患者さんを中心に「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVIあるいはTAVR)」が適用されるようになりました。

TAVIは、鼠径部(ふとももの付け根)や左胸部の小さな切開から約6 mm程度のカテーテルを挿入し、石灰化により開きが悪くなった大動脈弁の内側に人工の生体弁を留置します(図を参照)。治療の所要時間は通常1−2時間程度であり、術後翌日からは歩行リハビリが可能となります。

TAVIの特徴は、従来の手術に比べて、大きな切開や人工心肺装置を使用した心停止を行う必要がなく、より短時間で手技を終了することができることです。そのため人工心肺使用に伴う合併症は回避でき、また早期リハビリ開始が可能となるため、体力低下に伴う合併症の回避が期待できます。人工の大動脈弁を確実に植え込むという点では、従来の手術治療に比べて劣る面がありますが、高齢患者さんや他の健康問題を抱えていらっしゃる患者さんなど通常の手術治療では合併症発生率が高いと判断される際には非常に有益な治療法となります。

当院には、通常の心臓血管手術やTAVI以外の様々な心臓カテーテル治療、カテーテルを使用した大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術などの治療にも国内外で幅広い臨床経験を持つ医師が在籍しており、TAVIにおいてもチームとして安全かつ効果的な治療を提供しています。ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI/TAVR: Transcatheter Aortic Valve Implantation / Replacement)
経カテーテル的バルーン大動脈形成術BAVバヴ: Balloon Aortic Valvuloplasty)

現在では大動脈弁狭窄症に対して外科的開胸術もしくはTAVI治療が一般的ですが、患者様の背景により上記治療が行えない場合に可及的に大動脈弁の狭窄解除を試みる方法です。バルーンによる風船拡張のみで患者様ご自身の自己弁を拡張し(図参照)、狭窄の解除を行います。

経カテーテル的バルーン大動脈形成術(BAV: Balloon Aortic Valvuloplasty)
経カテーテル的僧帽弁弁尖間修復術(TEER: Transcatheter Edge-to-Edge Repair)

僧帽弁逆流症は、心臓の僧帽弁が正常に閉じない構造異常により、血液が逆流し心臓に負担がかかる弁膜症です。経カテーテル的僧帽弁弁尖間修復術(TEER: Transcatheter Edge-to-Edge Repair)は、この僧帽弁逆流症に対する修復治療法の一つで、複数の臨床試験によりTEERの効果が明らかにされました。特に心不全による症状の改善や再入院率の低下に寄与することが確認されました。

TEERはカテーテル内を通して僧帽弁の尖端部分にクリップ(マイトラクリップ)を留置し、異常な僧帽弁の開閉を改善し、弁逆流軽減および心臓への負担を軽減します(図を参照)。治療は全身麻酔にて行われ、鼠径部(足の付け根)よりカテーテルを挿入します。治療時間は1−3時間程度で、治療翌日から歩行リハビリが可能となります。

経カテーテル的僧帽弁弁尖間修復術(TEER: Transcatheter Edge-to-Edge Repair)
経皮的左心耳閉鎖術(LAAC: Transcatheter Left Atrial Appendage Closure)

経皮的左心耳閉鎖術は、心臓の左心耳と呼ばれる部位を閉鎖する治療法です。左心耳は心臓内に存在する袋状の構造です。心房細動という不整脈がある場合、左心耳の内部に血の塊(血栓)が形成される事で重大な脳梗塞のリスクを増加させる可能性があります。血栓形成の予防のために血液をサラサラにする抗凝固薬の内を継続することが必要ですが、約4分の1の患者様が出血などの副作用により内服を継続することができません。経皮的左心耳閉鎖術は、この左心耳を閉鎖することで血栓の形成を予防すると同時に抗凝固薬内服からの離脱を目的として行われ、複数の臨床試験によりLAAC効果が確認されました。

治療は全身麻酔下に行われ、鼠径部(足の付け根)からカテーテルを使用して左心耳に内側から蓋をすることで左心耳を閉鎖します(図を参照)。1〜3時間程度で終了します。左心耳は胎生期の遺残と考えられており、閉鎖することで不利益はないとされています。

経皮的左心耳閉鎖術(LAAC: Transcatheter Left Atrial Appendage Closure)
経カテーテル的PFO閉鎖術(Percutaneous Foramen Ovale Closure)

経カテーテル的PFO閉鎖術は、特定の心臓の奇形である卵円孔開存症(PFO: Patent Foramen Ovale)の治療法です。PFOは心房の中隔に存在する開口部の異常であり、静脈および動脈血液の異常な通り道となり、脳梗塞の一因となる事があります。経カテーテル的PFO閉鎖術は、この開口部をカテーテルで閉じることで異常な血液の通り道を防止することを目的としています。

経カテーテル的PFO閉鎖術は複数の臨床研究にて、脳梗塞の再発予防に効果的であることが確認されました。特に、脳梗塞の既往がある若年の患者様や再発リスクを抱える患者様にとって、PFO閉鎖術は有益な治療法となっています。

治療は全身麻酔下に鼠径部(足の付け根)からカテーテルを挿入し、異常な通り道を2つの蓋で挟むような形で閉鎖します(図を参照、イラストは心房中隔欠損症に対する経カテーテル的治療です)。治療時間は約1時間程度で終了します。

経カテーテル的PFO閉鎖術(Percutaneous Foramen Ovale Closure)
胸部ステントグラフト内挿術TEVARティーヴァー:Thoracic EndoVascular Aortic Repair)
腹部ステントグラフト内挿術EVARイーヴァー:EndoVascular Aortic Repair)

大動脈疾患に対しては、従来、人工心肺装置使用下での人工血管置換術が一般的でしたが、年齢や病態に応じ、侵襲を減らす目的で血管内治療(図1a、b、c)を行なっています。

TEVAR=ステントグラフト内挿術
胸部ステントグラフト
EVAR=腹部ステントグラフト内挿術
腹部ステントグラフト

また、従来の解剖学的制限のある症例に対しても外科的治療や他の血管内治療との組み合わせを用いたHybrid治療も行い、対応をしております(図3)。

ハイブリッドTEVAR

待機的症例の他にも、胸部大動脈瘤破裂、合併症を伴うB型大動脈解離、腹部大動脈瘤破裂など緊急を要する疾患に対しても、院内にステントグラフトを常備することで、より迅速な対応ができるよう準備をしております(図4a, 4b)。日本ステントグラフト実施基準管理委員会認定の複数名の指導医、実施医により身体負担の少ない治療、緊急症例に対する迅速な救命手術を提供しております。

急性B型大動脈解離に対するTEVAR
腹部大動脈破裂に対するEVAR
経皮的血管形成術PTAピーティーエイ: Percutaneous Transluminal Angioplasty)

下肢閉塞性動脈硬化症の狭窄あるいは閉塞した動脈に対して血行再建術を行っています。足の付け根に局所麻酔をして、皮膚から動脈を穿刺し、カテーテル(細い管)を血管の中に通して、病変部位をバルーン(風船)やステント(金属)で広げる治療です。組織に流れる血液量を増やし、間欠性跛行や安静時痛などの症状を軽減し、潰瘍の治癒を期待します。通常、所要時間は1?2時間程度で、傷口は小さくて済み、3泊4日の入院で行っています。

再生医療:自己骨髄由来培養間葉系細胞移植による末梢動脈疾患に対する完全自家血管新生治療

下肢の痛み、皮膚の潰瘍・壊死などの症状で困っている慢性重症下肢虚血患者さんに対し、内科的な薬物治療、カテーテルによる血管形成術、外科的バイパス手術などが奏功しない場合、新しい治療法として再生医療が考えられます。患者さん自身の少量の骨髄細胞を、自分自身の血液で培養した細胞を使って、血管を再生し下肢虚血を治療する方法です。(細胞・再生医療センターのページはこちら

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