消化器内科
強力集束超音波治療法HIFU自費診療について
強力集束超音波治療法HIFU(ハイフ)とは
膵がんは近年増加しているがんのひとつであり、本邦におけるがんの死因において、膵がんは全体で4位であり、男性で4位、女性で3位となっています。また年別罹患者数は2010年に3万人を超え、30年前の10倍以上となっています。
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計)
これまでさまざまな診断法を駆使し、早期診断に務めているものの切除不能膵がんがいまだ60%前後を占めているのが現状です。さらに切除不能の膵がんに対しては原則的に、化学療法あるいは化学放射線療法がおこなわれておりますが、満足しうる成績が得られているとはいえないのが現状です。また切除可能な状態でも手術の侵襲が大きいため、高齢者や併存症を抱える場合には、全身状態を考慮して手術ができないこともあります。
そのような場合に、切除不能の膵がんに対して治療効果を得ることと症状を改善することを目的に、強力集束超音波HIFU ( High intensity focused ultrasound 読み方:ハイフ) 療法が選択肢のひとつとなってきます。
このHIFU療法は、超音波を用いて行う治療法で、放射線被曝がなく、針や麻酔なども必要としない侵襲の少ない治療法です。
日本では、前立腺肥大、本態性振戦、パーキンソン病による運動症状の緩和においては保険診療で行われておりますが、膵がんではまだ保険収載がされていないため、自由診療となります。自由診療として治療を行うことに関しては、東京医科大学病院の病院倫理審査委員会で承認され、病院長の許可を得て実施しております。
適応条件について
この治療の対象となる方は、切除不能の膵がん(転移のある場合も含まれます)と診断されている患者さんで、主治医より治療の了承が得られている場合です。放射線治療後や通常の治療で痛みのコントロールが難しい患者さんも対象となります。
ただし、腫瘍が膵尾部の奥に位置している場合や消化管に接しており、消化管穿孔や消化管閉塞の危険性が高い場合は本治療の対象となりません。
これまでの経緯と治療効果、偶発症
HIFU治療は、2008年12月より2019年3月まで、当院の医学倫理審査委員会の承認のもと、臨床研究としてこれまでに176名の膵がん患者さんの治療を行ってきました。この臨床試験の結果では、有害事象発生率は2.7%(皮膚熱傷、膵仮性嚢胞、膵炎、胃潰瘍)で、いずれも軽症であり重篤な有害事象は認めておりません。
治療効果に関しては、化学療法にHIFU治療を併用することで、痛みなどの症状を緩和する効果は67%、局所の腫瘍を制御する率は72%、平均生存期間は、化学療法単独の治療群に比較して予後延長効果を認めております。
HIFU治療の実際について
HIFU治療は5日間程度の入院で行います。治療当日は絶食となります。治療台の上に仰向けで寝ていただき、まず通常の超音波で治療する腫瘤を観察します。
脱気水で満たされた水嚢を付帯したトランスデューサー(超音波を発する装置)を降下させ、その水嚢で腹部を軽度圧迫します。超音波で腫瘤を観察しながら段階的に出力を調節し、トランスデューサーを少しずつ移動させながら超音波を腫瘤に集めて照射をします。
治療は、安全かつ苦痛なく短時間に施行可能です。やや温かい感じとピリピリとした感覚を生じることがありますが、痛みはほとんどないことから、治療は静脈麻酔や鎮痛・鎮静剤など一切使用せずに行います。
1回の治療にかかる時間は、腫瘍の大きさによりますが、約30分~1時間程度です。翌日に血液検査を施行し、問題なければ飲水や食事を再開します。通常1週間に2回を1セッションとして行い退院となります。膵がんでは、その後の経過にもよりますが、2~3ヶ月毎に繰り返して治療をおこなうことがあります。
(入院・治療スケジュール例)
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 |
---|---|---|---|---|---|
入院 | HIFU治療実施 (当日は絶食) |
血液検査 | HIFU治療実施 (当日は絶食) |
血液検査 | 退院 |
※入院・退院を短縮することも可能です。医師にご相談ください。(最短4日)
HIFU治療の利点と留意点
この治療を受けることの利点は、切除不能の膵がんに対する治療効果や症状が改善する可能性があることです。また偶発症に関しては前述したように、膵炎や膵仮性嚢胞、皮膚熱傷などが可能性としてあります。
現在の切除不能の膵がんに対して、化学療法以外の局所治療としては、保険診療である放射線治療が挙げられます。しかし、放射線治療は基本的に骨髄などに与える影響から、1回のみの治療であることと転移がある場合は適応となりません。
一方、HIFU治療は何回でも繰り返しての治療が可能です。また保険診療以外では、一部の放射線治療(重粒子線治療や陽子線治療)やナノナイフ治療があります。適応に関しては、当該施設にお問い合わせください。HIFU治療はそれらの治療の後でも可能です。
受診方法・料金について
下記、担当(治療)医師に、まずお電話でご連絡ください。その後、当院 医療連携推進センターを通じて当院セカンドオピニオン外来のご予約をお取りいただきます。HIFU治療に関するセカンドオピニオンは祖父尼(そふに)医師が担当しております。その際にHIFU治療等の詳細についてお話いたします。
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HIFU治療は自費診療です。入院治療費は150万円(HIFU治療2回を含む)です。 なお、万が一、偶発症が発生した場合の治療費およびその後の経過観察も自費となり、それらの費用は状況に応じて変わります。偶発症が発生しないように細心の注意を払って治療させていただきます。
治験について
担当医
お問い合わせ先
東京医科大学病院 臨床腫瘍科(消化器内科) 祖父尼 淳
電話番号 03-3342-6111(代)
メールアドレス a-sofuni@tokyo-med.ac.jp
※現在、機器一部故障のためメンテナンス中です。そのため現在、治療は中断中です。HIFU治療の適応であるか否かのご相談は承っております。上記メールか医療連携推進センターにお問い合わせください。
以上
(2024年9月現在)