循環器内科
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸を放置すると、
心筋梗塞や脳卒中を発症する危険があります。
早期の治療が大切です。
【解説】 椎名 一紀(循環器内科)
概要
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まってしまう病気です。わが国には約300万人もの患者が存在すると言われますが、多くの方は適切な治療を受けていません。重大な問題としてこの病気は、高血圧、糖尿病などの生活習慣病と密接な関連があり、放置しておくと心筋梗塞や脳卒中など循環器系の病気を発症する危険があることがわかっています。
2.原因と症状
主な原因である肥満に、顎が小さいことや扁桃(へんとう)肥大なども加わって、睡眠中にのどの空気の通り道(上気道)は狭くなり、さらにはふさがってしまいます。その際、いびきの症状は必ず起こります。
良質な睡眠がとれないために目覚めが悪く、昼間に強烈な眠気やだるさが生じ、集中力が低下します。
3.検査
睡眠時無呼吸の診断には、睡眠中の呼吸の観察が必要です。正確な診断と治療方針の決定には、一泊入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査が必要ですが、ご自宅で行う簡易検査もあります。
4.治療
重症度の高い方には、睡眠中の気道の閉塞を防ぐ治療法(CPAP:シーパップ)を行います。これは、就寝時に鼻に装着したマスクに圧を加えた空気を送り込むもので、安全で長期効果も優れています。耳鼻咽喉科の手術が適している方もいます。軽症の方はマウスピースで治療します。
5.予防
太らないように、カロリーの取り過ぎや運動不足に注意するほか、寝る前の飲酒も控えましょう。
睡眠時無呼吸(SAS)外来受診のご案内
治療のプロセス
CPAP治療を開始した後、仕事中の眠気がなくなって血圧も安定
木村 俊則さん(48歳・仮名)さんの場合
検査・初診家族にいびき、無呼吸を指摘されて受診
以前から妻に、苦しそうないびきをすると言われていましたが、最近は目が覚めても疲れがとれず、会社で会議中にも眠ってしまうことがよくあるため、当院の睡眠時無呼吸外来を受診しました。
初診で下記のデータが得られたほか、顎が小さくて首周りが太いことから閉塞性睡眠時無呼吸の疑いがありました。一泊入院による睡眠ポリグラフ検査の結果、重症閉塞性睡眠時無呼吸と診断されました。
〈検査結果〉
- 熟眠感の欠如
- 集中力の低下
- 起床時の頭重感の訴え
- 高度の肥満
- メタボリックシンドローム
- 血圧 150/100mmHg
治療開始病院で治療を行うと、睡眠時無呼吸は消失
日中の眠気は、眠っているときに約300回も起こっている睡眠時無呼吸が原因でした。再度一泊して夜間にCPAP(シーパップ)という鼻マスクからの持続陽圧呼吸を行ったところ、睡眠時無呼吸は消失しました。
治療開始後の経過自宅でも治療を始め、症状がすみやかに改善
自宅で寝るときもCPAP治療を始めました。いびきがなくなって朝の目覚めがすっきりし、仕事中の眠気が感じられなくなりました。同時に体の調子がよくなり、運動を始めたことで半年で8kgの減量にも成功しました。
その後病状が安定
CPAPに慣れて、毎晩使用して寝ています。毎月外来で経過観察していますが、木村さんの病状は安定しています。