東京医科大学病院 TOKYO MEDICAL UNIVERSITY HOSPITAL

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放射線科

ラジウム外来

骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対するラジウム‐223による放射線治療

【1】去勢抵抗性前立腺がんと骨転移

前立腺がんは男性ホルモンによって成長するという特徴があります。そのため、男性ホルモンを抑えるホルモン療法によって高い治療効果を得ることができますが、やがてその効き目が悪くなり、PSAが上昇したり、がんが進行したりします。ホルモン療法により、男性ホルモンの分泌が抑えられているにもかかわらず悪化する前立腺がんのことを「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」と呼びます。
また、去勢抵抗性前立腺がんにおいては、およそ80%の頻度で骨転移が起こることが知られています。骨転移が起こりやすい部位は、脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨などです。骨にがん細胞が転移しても、初期では症状がほとんどありませんが、病気が進行すると、痛みやしびれ、麻痺などが起こりやすくなります。また、転移した部位の骨が脆くなることで、小さな力がかかるだけで骨折しやすくなります(病的骨折)。さらに、高カルシウム血症による食欲不振、吐き気、倦怠感、多尿、意識障害などの症状がみられることがあります。

【2】骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんの治療

骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対する治療薬には主に3つの種類があります。

  1. ホルモン療法薬

    男性ホルモンの分泌や働きを妨げることで、がん細胞の増殖を抑える作用を持つ薬剤です。

  2. 化学療法薬

    化学物質を使って、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする作用を持つ薬剤です。

  3. 放射性医薬品

    特定の放射性物質(ラジオアイソトープ:RI)を含んだ薬剤を注射などで体内に投与し、その薬から放出される放射線によって治療効果を発揮します。現在、骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんの治療に認められているのはラジウム‐223のみです。

【3】ラジウム‐223による治療

  1. ラジウム‐223の作用メカニズム

    ラジウム‐223は、アルファ線と呼ばれる放射線を放出する放射性物質です。ラジウム‐223には、骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集積しやすい性質があり、注射で体内に送られると、代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く集積されます。そして、そこから放出されるアルファ線が、骨に転移したがん細胞の増殖を抑えます。こうした作用によって、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対して治療効果が期待できます。また、骨転移に伴う痛みやしびれ、麻痺などの症状や骨折といった症状の発現を遅らせる効果が期待できます。なお、ラジウム‐223は骨転移部位にしか集積しないため、肝臓や肺など内臓に転移したがんには効果は期待できません。

  2. 治療方法

    ラジウム‐223は、4週間ごとに1回、最大6回まで静脈注射します。指定された日に来院し、注射を受けてください。入院の必要はありません。

  3. ラジウム‐223による効果

    大規模臨床試験において、ラジウム‐223は骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者に対し、次のような効果が報告されています。

    • 全生存期間(OS)が、プラセボ(偽薬)と比較して延長しました。
    • 骨転移に伴う痛みやしびれ、骨折といった症状が発現するまでの期間が、プラセボと比較して延長しました。
    • 骨マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP) が減少しました(PSAの上昇が必ずしもラジウム‐223の有効性を否定するものではありません)。
  4. 副作用

    ラジウム‐223は正常の骨や骨髄にもある程度集積するので、骨髄抑制という副作用が起きる可能性があります。骨髄抑制とは、白血球や血小板、赤血球などをつくっている骨髄の機能が低下して、これらの血球成分が減少することをいいます。骨髄抑制以外の主な副作用として、悪心、下痢、骨痛、疲労、嘔吐、食欲不振などがみられる可能性があります。
    その他、ラジウム‐223を投与して数日後に骨の痛みがやや強まることがありますが、一時的なものでやがて消失します。

まとめ

骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対する治療には、ホルモン療法薬、化学療法薬、放射性医薬品などのさまざまな薬物療法があります。これらの治療には、それぞれの特徴や長所と短所があるので、患者さんの状態に応じて選択することが必要です。ラジウム‐223は放射性医薬品で、また抗悪性腫瘍薬でありながら副作用も比較的少なく、骨転移の症状を抑えながら生存期間の延長が期待できる治療薬です。骨転移に伴う痛みやしびれ、骨折といった症状は、患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させる原因になるばかりでなく、生存期間にも影響を及ぼすリスク要因となります。このため、できるだけ早い段階から適切な治療を始めて、病気の進行や症状を抑えることが大切です。ラジウム‐223は骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌患者さんの新しい治療選択肢として、多くの患者さんの福音となることが期待されます。

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