病理診断部
概要
病理診断とは、患者さんから採取された細胞や組織を主に光学顕微鏡で観察して病変を診断することです。病理診断は、病変の質的診断には欠かせないものであり、とくに腫瘍においては最終的な確定診断となります。このことは、治療方針の決定、治療効果の評価、および予後判定に重要な意味をもちます。
当病理診断部では、臨床検査技師が精度の高い技術をもって、病理組織診断(生検組織診断、手術で摘出された組織・臓器の診断、手術中の迅速診断)に用いる各種の標本作製を行っています。また、細胞診断においては標本作製とともに、公益社団法人日本臨床細胞学会認定の「細胞検査士」資格を有したプロフェッショナルな技師が鏡検・判定に従事しています。
臨床検査技師 | 17名 |
---|---|
細胞検査士 | 15名(国際細胞検査士:11名) |
認定病理検査技師 | 7名 |
二級臨床検査士(病理) | 13名 |
電子顕微鏡一般技術士 | 2名 |
遺伝子分析化学(初級) | 1名 |
(2024年5月31日現在) |
スタッフ
三宅 真司(技師長)
渡部 顕章(主査)
藤井 愛子(主査)、稲垣 敦史(主査)
小林 寛子、大浦 真由実、川野 恵美子、
金子 清花、秋山 里佳子、忽滑谷 昌平、
高橋 由美、軽部 晃平、坂本 佳、
及川 智世、他3名
主な業務
1.組織診断用の標本作製
患者さんの身体より採取された病変の組織からスライドガラス標本(プレパラート)を作製して、病理医が顕微鏡にて病理診断を行います。
切出し:手術などによって摘出された組織や臓器は、ホルマリンで固定された後、病理医が肉眼的に病変の部位、大きさ、広がりを確認します。その後、診断に必要な部位を小さく切り取ります。
包埋:切出した組織はアルコールやキシレンを通した後、パラフィンに埋めて固めたブロックにします。
薄切:パラフィンブロックは特殊な装置(ミクロトーム)で、組織とともに約3μmの薄さにスライスして、スライドガラスに貼付します。
染色・診断:薄切したスライドガラスは、自動染色装置を用いてHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色を行います。その標本を病理医が顕微鏡にて診断し、病変組織は良性か悪性か?病変の広がりは?手術によって取り切れているか?転移はあるか?術前の化学療法や放射線療法などの治療効果は?など、患者さんの治療方針に必要な情報を、治療にあたる臨床医に提供しています。
2.術中迅速診断用の標本作製
手術中に提出された組織の一部を凍結し、迅速にスライドガラス標本(プレパラート)を作製して、病理医が顕微鏡にて病理診断を行います。検体の提出から診断報告までを約30分以内で行うことを目標としています。
包埋:特殊なコンパウンドに組織を埋めて、-80℃の冷凍庫中にあるヘキサンにて瞬時に凍結させブロックを作製します。
薄切:凍結ブロックは特殊な装置(クリオスタット)を使用し、約4μmの薄さにスライスして、スライドガラスに貼付します。
染色・診断:迅速にHE染色を行い、病理医が顕微鏡にて診断します。
これは、手術前に診断が困難であったもの、癌の広がりや転移が不明瞭で切除範囲の決定が難しいもの、などに対して行われます。術中迅速診断結果は、術式の方針決定に重要な判断材料となります。
3.細胞診断の標本作製と鏡検
患者さんから採取された尿・喀痰・胸腹水中の細胞、乳腺や甲状腺などの病変から細い注射針により吸引した細胞、および子宮頸部からブラシで擦過した検体などから直接標本を作製します。その後、細胞診用の染色(パパニコロウ染色)を行います。染色された標本を鏡検し、良性・悪性や病変の推定診断を行います。細胞診断は組織診断と比べて、患者さんの負担が少ないという利点があります。細胞検査士の資格をもつ臨床検査技師によるスクリーニングの後、病理医による最終診断・報告を行っています。また、当病院は日本臨床細胞学会教育研修施設の認定を受けています。