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有害事象の公表について

2019.12.20

 本年8月、当院で、術中回収血による異型輸血をした事象が発生しました。重大な事象であると考え、患者さん及びご家族のご理解を得て公表いたします。

1.事象の概要
 2019年8月28日、70歳代で狭心症と腎不全(血液透析)の患者さんに対して手術を行い、手術中に専用の機械で自己血を回収しました。患者さんは集中治療室に入室し、回収した自己血も同室の保冷庫に保存しました。同日に、この患者さんへ輸血の必要性が生じたため、保冷庫の自己血(血液型はO型 Rh(+))を輸血することにしました。ところが、この時に誤って別の患者さん(血液型はA型Rh(-))の血液を投与してしまいました。誤って投与された血液は、8月27日の手術で術中回収し、やはり集中治療室の保冷庫に保存していたものでした。投与直後に異型輸血を疑うことはできませんでした。8月29日に保冷庫を定時点検した時、投与したはずの本患者さんの血液が、保冷庫に残っていたことから誤投与が判明しました。この時点で輸血開始から10時間が経過していました。血液検査上、血小板低下などの異常を認めましたが、すでに応急処置を施しており、徐々に患者さんの状態は安定しました。異型輸血を受けた患者さんは、9月に集中治療室から一般病棟に移り、異型輸血の急性期合併症はなく、11月に退院されました。今後は引き続き当院外来にて、長期的な合併症に対する経過観察および術後続いている腰痛の治療に努めてまいります。

2.事故後の対応
 患者さんの治療を最優先するとともに、速やかに東京都福祉保健局、関東信越厚生局へ、また今月には日本医療機能評価機構へ報告いたしました。そして、外部委員2名(大学病院の元医療安全管理責任者、大学病院の輸血療法の専門家)を含む、院内医療事故・有害事象調査委員会を設置、原因究明と再発防止策を検討しました。

3.事故原因
 心臓手術で、術中に自己血を回収し輸血する手技は、標準的に行われています。日本自己血輸血・周術期輸血学会では、回収式自己血輸血の実施基準を定めており、当院でもその基準に則って回収血の輸血を行っていました。しかし、現場職員の申し合わせで運用しており、明文化された手順はありませんでした。また当院の輸血療法委員会や輸血部の管理下にもありませんでした。医療事故・有害事象調査委員会は、これらが本事象の根本原因であると指摘しました。本事象は他に、保存の適応でない他科の(誤投与した)回収血を保存したこと、血液回収装置が通常と異なりラベル添付が出来ない機種であったこと、他科の(誤投与した)回収血の存在を共有できていなかったこと、時間的に破棄されるべき(誤投与した)他科の回収血が保冷庫に残っていたこと、集中治療室に2台の保冷庫があったこと、二人の患者さんの血液を別々の保冷庫で保管していたことが共有されていなかったこと、血液を詰めたバッグを標準的なバーコード管理しなかったこと、患者さんへ投与するときに、十分な確認作業を複数の職員で行わなかったことなど、さまざまな問題点があることが、調査委員会の検討で明らかになりました。
 そして、それらはすべて明文化された手順がなく、しかるべき組織の管理下にて、術中回収式自己血輸血を運用していなかった点に帰せられます。

4.再発防止策
 医療事故・有害事象調査委員会の調査結果を踏まえ、当院では以下の再発防止策を実施しています。
 (1)日本自己血輸血・周術期輸血学会の、回収式自己血輸血実施基準に則り、当院の取り扱い規約を定めた。
 (2)定めた規約は当院の輸血手順書に組み込み、その管理を輸血療法委員会で行うこととした。

5.おわりに
 患者さんとご家族のみなさまには、多大な苦痛と不安をおかけしたことを深く反省し、お詫び申し上げます。本事象の発生後は、患者さんの治療を最優先するとともに、院内医療事故・有害事象調査委員会を開催して、原因の究明と再発防止策を検討しました。この検討結果を踏まえ、すでに再発防止策を実施しております。今後、同様の事象を二度と繰り返さぬよう、安全な医療の提供に努めてまいります。

以上

東京医科大学病院

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