当院泌尿器科では日本でいち早く「ダヴィンチ」手術を取り入れ、前立腺がんの多くの症例を積み重ねてきました。2012年4月の保険適用後、毎年200件以上の手術を行ってきており(図1)、先進医療の時代からのこれまでの手術件数は2000例以上となっています。また2016年4月から腎臓がんに対する腎部分切除術が保険適応となり、この手術も着実に増えてきております。そして2018年4月には膀胱がんに対する膀胱全摘除術が保険適応となりました。当科では2018年10月から「ダヴィンチ」手術による膀胱全摘除術を開始しています。
ロボット支援手術は特殊な鉗子をお腹に入れ、視野を10倍以上に拡大し、3D立体画像を見ながら、同じ手術室内の少し離れたところから遠隔操作で手術をします。良好な視野のもと、震えのなく微細な動きができる鉗子の操作が可能となったため、開腹手術と比較し以下のような利点があります。
- 腹部の傷が小さく痛みも少ない。
- 出血が少ない(輸血率は1%以下)。
- 手術後の尿失禁の回復が早い(前立腺の場合)。
- 手術後の性機能障害からの回復が早い(前立腺の場合)。
- がんの治療成績は開腹手術と比較し遜色がない。
入院期間: | 約2週間 |
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麻酔方法: | 全身麻酔 |
手術時間: | 2-4時間 |
手術創: | お臍の上に3cm穴をあけ、カメラを入れます。その他に計5カ所の小さい穴(5-12mm)をあけます。手術の最後にお臍の上の穴から前立腺を取り出します。 |


全身麻酔で行います。腹部(おへそ)のあたりから鉗子類を6カ所の穴から挿入して恥骨の裏側から前立腺をすべて摘出して、穴を縫合します。
手術時間は2時間から2時間半程度
腹部に鉗子類を挿入する箇所


- 尿道に管が入りますが手術後7日目に管を抜き,排尿状態を確認します。
- 手術翌日から歩行します。
- 手術後、3-4日はベッドから起き上がるときに軽度の痛みがあります。適宜、鎮痛剤を使用します。
- 尿道の管を抜いて3-4日後に退院となり、2、3週間後に外来で病理結果を説明します。その後は数ヶ月ごとに血液のPSA検査などで経過をみます。
【根膀胱全摘除術の方法】
膀胱を摘出する手術には以下の3つがあります。
1.開腹手術
2.腹腔鏡手術
3.「ダヴィンチ」手術
腹腔鏡手術と同様に気腹により出血量が少なくすることができます。また傷が小さく手術後の痛みが少なく術後の回復が早いなどの点で開腹手術より優れています。腹部に鉗子類を挿入する場所は、前立腺の手術とほぼ同じです。
【尿路変向術について】
膀胱には尿を貯めて排出するという機能をもっているので、膀胱を摘出した後には尿の通り道を変える処置をしなくてはなりません。これを尿路変向術といいます。
代表的な尿路変向術には以下のものがあります。
①回腸導管
小腸(回腸)の一部を導管として使い、腹部にストーマを作成する方法です。ストーマからは絶えず尿が出てくるため集尿器具を皮膚に貼り付けておき、定期的に交換することが必要となります。
手術手技が比較的簡単なことと合併症が少ないことから、現在最も利用されることが多い術式です。
②自然排尿型代用膀胱 (図2.3)
小腸を使って新たに尿を貯める袋を作成して代用の膀胱とする方法です。これを尿道につなぐことによって尿道から自分で排尿できるのが特徴です。集尿器具は必要ないので患者さんのQOL(生活の質)はとても良くなります。しかし、本来の尿意はないので時間を決めて排尿するなどの排尿管理が必要です。当科ではこの術式も積極的に取り入れています。
③その他(自己導尿型代用膀胱、尿管皮膚瘻など)
(2018年11月更新)