手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖

呼吸器外科

呼吸器外科・甲状腺外科

繊細な手技が求められる呼吸器領域に
新しい可能性を開く「ダヴィンチ」手術

池田 徳彦 主任教授

低侵襲で精度の高い手術操作が可能となるダヴィンチによる手術は縦隔腫瘍、肺がんに対する手術でも適応となり、当院でも積極的に行っております。

対応疾患

肺がん、縦隔腫瘍

低侵襲手術が主流となる中での「ダヴィンチ」による呼吸器外科手術

呼吸器外科領域の縦隔腫瘍や肺がんに対する手術は、以前は肋骨や胸骨を大きく切断することによって得られる大きな傷で行われてきました。このため他領域の手術と比較し痛みが強く、負担の大きい手術とされてきました。しかし近年「胸腔鏡下手術」の普及により肋骨と肋骨の間から器具を挿入することによって手術が行われ、単に「傷が小さい」ということのみではなく、「骨を切らずに行うことができる」手術であることから、手術における負担軽減に大きく貢献しています。そこに内視鏡手術機器の一つとして手術支援ロボット「ダヴィンチ」か加わりました。「ダヴィンチ」の特徴は、通常の内視鏡手術の器具と異なり、操作用の鉗子を狭い胸腔内で自在に角度を変えることができること、術者の手振れを除去する機能がついていること、術野を精細な3次元画像で近接して見ることができるといった特徴があります。比較的狭い領域できわめて繊細な操作が求められる胸腔内、縦隔内の手術において、負担軽減だけでなく手術の「精度向上」に大きな役割を果たしております。2018年4月からは、ロボット支援下による縦隔腫瘍手術、肺がんなどの肺悪性腫瘍に対する肺葉切除、肺区域切除手術などが保険収載されました。

当科での「ダヴィンチ」手術への取り組み

当科では以前より負担を軽減する低侵襲手術に積極的に取り組んでおり、現在では肺がんの約9割の手術を「胸腔鏡下手術」として行っております。「ダヴィンチ」による手術は2010年から縦隔腫瘍に対する切除を中心に臨床研究として行ってきました。2020年9月から肺がんを中心とした肺悪性腫瘍に対する肺葉切除、肺区域切除手術に対象を拡大しダヴィンチを用いた手術を積極的に行っております。

「ダヴィンチ」による肺がん手術

  • 側胸部の5か所の小さい穴から鉗子を挿入して行います。1つの傷の大きさはこれまでの胸腔鏡手術に比べより小さくなります。
  • 鉗子をロボットのアームに装着し、鉗子の操作を行うロボットを術者が操作することで手術を行います。
  • 術式は開胸、胸腔鏡手術と同じ肺葉切除または肺区域切除の標準的な手術を行います。
  • 術後は4日~7日で退院となります。

今後の展望

今後、呼吸器外科領域の手術負担の軽減、精度向上においてロボット支援下手術の貢献はより大きくなっていくと考えられます。当科ではロボット支援下手術の件数、割合をさらに増やしていく予定です。


(2023年2月更新)