手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖

消化器外科

消化器外科・小児外科

従来の内視鏡下手術では困難な
消化管手術を可能にするロボット支援手術

永川 裕一 主任教授

消化器外科では2010年から直腸癌と食道癌、2014年より膵癌・胆道領域、さらに2022年より胃癌と結腸癌のロボット支援手術を行っています。それぞれの手術で積極的に内視鏡下手術を行ってきましたが、ロボット支援手術の特徴である拡大して術野みることができる効果、自由度の高い多関節機能により、さらに安全な手術の確立が期待できます。

当分野行っている手術術式
食道癌・胃癌
良性・低悪性度膵腫瘍,膵癌,
胆管癌,十二指腸乳頭部癌
大腸癌(結腸癌,直腸癌)
先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常

対応疾患

食道癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌

ロボット支援手術について

現在当院では最新式のロボットが2台稼働しております。
ロボットは1990年代に米国で開発され1999年より臨床用機器として販売されており、日本では2006年に当院が初めて導入しました。1から2cmの小さな創より内視鏡カメラとロボットアームを挿入し高度な内視鏡手術を行います。術者は術野から離れた場所にあるサージョンコンソールにて、3Dモニター画面を見ながらあたかも術野に手を入れているようにロボットアームを操作して手術を行います。

食道癌・胃癌手術での取り組み

ロボット支援手術の特筆すべき利点としては、関節を有する鉗子の柔軟性にあると言えます。ヒトの手首以上の可動域、柔軟で“手ブレ”のない正確さ・緻密さは指先にも勝る繊細な動きを有し、従来の腹腔鏡下手術のような動作制限がない点が特徴として挙げられます。その他に、高精細3D画像により、細部の手技が正確に行うことができ、手術合併症を減らすことが期待されています。
今後、低侵襲である胃癌に対するロボット支援手術は広く普及することが予想されます。

膵臓・胆道手術での取り組み

膵臓・胆道の手術では、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、膵腫瘍核出術において2020年にロボット支援膵切除術が保険収載され、本術式を導入する施設が増えております。当院では肝胆膵外科手術および内視鏡・ロボット手術の熟練したエキスパートにより本手術を行っておりロボット支援膵切除術(膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術)は日本トップクラスの技術と手術件数を誇っております。当グループは、インテュイティブサージカル社認定ロボット手術見学メンターサイト(手術見学施設))に認定されており、多くの施設から手術見学を受け入れております。

膵・胆管合流異常に伴う先天性胆道拡張症に対して全国に先駆け東京医科大学病院倫理審査委員会承認のもと病院費を用い、ロボット支援先天性胆道拡張症手術を行っておりました。2022年より保険収載されたため、現在保険を用いてロボット手術を行っており、全国より患者さんが来院されております。

大腸癌手術での取り組み

当科は、本邦のロボット黎明期の2010年に直腸癌に対するロボット支援手術を開始しました。直腸は骨盤に囲まれた狭い空間に膀胱・前立腺・子宮・卵巣などの重要な臓器と一緒に密集して存在してます。ロボットの自由度の高い多関節鉗子、手ブレ防止、3D拡大視機能は、癌を完全に切除する根治性と排尿、性機能に関係する自律神経を温存するという2つの重要な命題に対して精緻な手術が可能となります。また、2022年から結腸癌に対するロボット手術を導入しています。ロボットによる結腸癌切除後の体腔内吻合は患者さんのからだにやさしい低侵襲手術を達成します。また、モーションスケール機能や多関節機能鉗子により高い根治性を確保し、今後さらなる普及が見込まれます。


(2023年3月更新)