前立腺がんの治療

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前立腺がんの治療方法は病期によって変わってきますが、大きく分けると以下のように3つに分けられます。

(1)転移のない早期がん(PSAも低く、悪性度もあまり高くない)
手術療法、放射線療法(外照射、小線源療法)、薬物治療、経過観察(PSA監視療法)など、どの選択肢でも可能です。

(2)転移は無いがPSAや悪性度が高い局所進行が疑われるがん
やや選択肢が狭まり小線源療法や経過観察などの選択肢は基本的にはお勧めできません。主な治療の選択肢としては手術療法や内分泌療法併用した放射線療法が一般的となってきます。

(3)骨転移やリンパ節転移があるがん
基本的には内分泌療法などの薬物治療が基本となってきます
 

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手術療法

手術は、合併症のない限局性前立腺がんにおいては最も根治性が高い治療であるとされています。手術による前立腺がんの治療の場合、部分切除などは難しく、基本的に前立腺をすべて除去する前立腺全摘除術を行います。手術方法は、以前は開腹による外科的手術が行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術やロボット支援下手術が主流となってきています。当施設ではロボット支援下手術を早期より導入しており、多数の手術をしております。 以下がロボット支援下手術の特徴になります。
(1)出血が少ない
(2)術後の痛みが少ない
(3)術後の尿失禁の改善が早い
(4)性機能についてもその他の治療よりも機能温存しやすい
(5)感染症などの合併症頻度が少ない
入院期間は、約10~14日間となっており、手術後約一週間で尿道カテーテルを抜去して排尿状態を確認したのち退院となります。退院後は3-4か月ごとの外来通院を継続して、PSAのチェックを行っていきます。

【閲覧注意】
こちらの動画は、実際にロボット支援手術の様子を撮影した映像になりますので、 閲覧にはご自身の判断で十分にご注意ください。
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放射線療法

放射線療法は手術療法と比べほぼ同等の根治性を持つ治療法です。しかし放射線療法は以前までは器械の精度が悪く、前立腺だけでなく膀胱や直腸などの周囲の臓器にも放射線があたってしまうため、十分な放射線量を前立腺にあてることができず、効果は不十分でした。しかし、近年では器械の精度も上がり、合併症も少なく十分な根治性も確立されてきました。

1外照射治療(IMRT)

当院ではIMRTによる外照射治療を行っております。IMRTは外科的治療による切除と同等の根治性を持っております。これは前立腺の輪郭に沿って放射線を照射する治療で、周囲臓器への照射を抑えながら前立腺に十分な量の照射を行うことができます。通常1日1回、月曜日から金曜日まで週5回、約5-8週間実施します。放射線を照射する時間は1回につき3~4分ですが、正確に位置を決めて照射する必要があるので、一般的な外照射よりも少し時間がかかり、治療室への入室前の準備を含めて約2時間ほど在院時間を要します。

2小線源治療

小線源治療は前立腺に放射性物質(ヨード製剤)を留置してがんを治療する方法です。当院では年間20~30件施行されています。腰椎麻酔下にて会陰部(肛門より少し上の皮膚)に前立腺に向かって針を刺し、チタン製のカプセルで包んだ放射性物質を埋め込みます。手術時間は2時間ほどで終わります。
小線源治療の利点は、4~5日の短期の入院で行うことができ、体に傷もつかないので社会復帰も非常に早いことです。治療後の副作用として頻尿や排尿困難などの症状がありますが、時間の経過とともに軽快していきます。一般的な小線源治療は低リスクの前立腺がんに対して行われることが多く、近年では中リスクの前立腺がんに対しても広く行われています。高リスクに対しては内分泌療法や外照射を併用したりすることが多いです。

(小線源治療器具)
(小線源治療器具)
 (治療台の様子)
 (治療台の様子)
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薬物治療

【内分泌療法】

前立腺がんは男性ホルモンに依存して成長するため、男性ホルモンを遮断してがんの増殖を抑える治療法です。
・注射薬:精巣からの男性ホルモンの分泌を低下させる(下垂体に作用します)
・内服薬:男性ホルモンの作用を阻害する抗アンドロゲン剤

《注射薬》

「リュープロレリン」
LH-RHアゴニスト薬で、下垂体に作用しホルモン分泌を抑えることでテストステロンの分 泌を抑制し、がん細胞の増殖を抑えます。(主な副作用:発汗・ほてり・熱感等)

「ゴセレリン」
LH-RHアゴニスト薬で、下垂体に作用しホルモン分泌を抑えることでテストステロンの分泌を抑制し、がん細胞の増殖を抑えます。(主な副作用:のぼせ・ほてり・肩こり等)

「デガレリスク」
LH-RHアンタゴニスト薬で、下垂体に作用し黄体形成ホルモンの分泌を抑えることでテストステロンの分泌を抑制し、がん細胞の増殖を抑えます。(主な副作用:ほてり・体重増加・骨粗鬆症等)

《内服薬》

「ビカルタミド」
前立腺細胞のアンドロゲン(男性ホルモン)の受容体に対するアンドロゲンの結合を阻害することにより、抗腫瘍作用を示します。(主な副作用:乳房の腫張・乳房の痛み・ほてり等)

「エンザルタミド」
前立腺細胞のアンドロゲン(男性ホルモン)の受容体に対するアンドロゲンの結合を阻害することにより、抗腫瘍作用を示します。また、前立腺がん細胞が増殖する経路を複数阻害することにより効果を発揮します。(主な副作用:疲労・悪心・高血圧等)

「アパルタミド」
前立腺細胞のアンドロゲン(男性ホルモン)の受容体に対するアンドロゲン結合を阻害することにより、抗腫瘍作用を示します。また、前立腺がん細胞が増殖する経路を複数阻害することにより効果を発揮します。(主な副作用:疲労・皮疹・甲状腺機能低下症等)

「ダロルタミド」
前立腺細胞のアンドロゲン(男性ホルモン)の受容体に対するアンドロゲン結合を阻害することにより、抗腫瘍作用を示します。また、前立腺がん細胞が増殖する経路を複数阻害することにより効果を発揮します。(主な副作用:疲労・ほてり・吐き気等)

「アビラテロン」
アンドロゲン(男性ホルモン)合成酵素の活性を阻害することで、前立腺がん細胞の増殖を抑制します。(主な副作用:高血圧・疲労・ほてり等)

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その他の治療

【化学療法】

「ドセタキセル」
がん細胞の細胞分裂を阻害して、がん細胞の増殖を抑えます。
(主な副作用:食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢等)

「カバジタキセル」
チューブリンの重合を促進し、微小管を安定化させることにより細胞分裂を阻害します。
(主な副作用:好中球減少症・下痢・吐き気等)

化学療法は、主に入院(2泊3日)にて行いますが、患者さんの状況、病状に応じて外来化学療法センターなどで行うこともあります。

【骨転移、その他の治療】

前立腺がんの転移部位として、骨転移が最も多いとされています。骨病変の進行を遅らせる治療を行います。

「ラジウム-223」
放射線物質であるラジウム-223が骨転移巣に集まり、アルファ線を放出することにより骨に転移したがん細胞の増殖を抑えます。(主な副作用:貧血・血小板減少・好中球減少等)
ラジウム-233詳細はこちら

「ゾレドロン」
骨吸収を抑える作用を持ち、がんによる骨病変の進展を抑えます。
(主な副作用:発熱・吐き気・倦怠感等)

「デノスマブ」
骨吸収を抑える作用を持ち、がんによる骨病変の進展を抑えます。
(主な副作用:低カルシウム血症・疲労・吐き気等)

最終更新日:2022年6月7日