消化器外科・小児外科 主任教授
永川 裕一(ながかわ ゆういち)
こんな方に読んでほしい
「最高水準の治療を提供する」ことをモットーに
膵臓がん・胆道がんの治療に取り組む
膵臓がんや胆道がんなど膵臓・胆道疾患に対する外科的治療には高度な手術技術が求められ、チーム医療の力も不可欠です。東京医科大学病院 消化器外科・小児外科(診療科長 永川 裕一 主任教授)は、膵臓・胆道疾患の手術や治療に豊富な実績を持ち、全国各地から多くの患者さんが紹介されています。
永川主任教授は、長年、積極的な膵臓がん、胆道がん治療に取り組み、膵臓・胆道疾患に対し「最高水準の治療を提供する」ことをモットーに、一人ひとりの病状に応じた高度かつ先進的な治療を行っております。
膵臓がんは、かつて「治療が難しいがん」とされていましたが、近年の手術や化学療法の進歩により、克服できる可能性が高まっています。しかしながら、高度な医療を要する疾患であり、経験豊富な専門医の診察を受け、治療方針を迅速に決定し、一日でも早く治療を開始することが何よりも重要です。
膵臓がんの手術には高度な技術が求められ、膵臓がんの手術でよく行われる膵頭十二指腸切除術は難易度が高く、執刀医の技術が治療成績に大きく影響します。そのため、豊富な経験を持つ外科医のもとで手術を受けることが望まれます。
さらに、膵臓がんの治療には集学的治療とチーム医療の力が不可欠です。外科医だけでなく、消化器内科医、放射線科医、腫瘍内科医、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリスタッフなど、多職種が密接に連携し、それぞれの専門性を活かしながら、手術・化学療法・放射線治療・栄養管理を組み合わせた治療に取り組むことが重要です。加えて、術後の管理にも高度な医療が求められるため、手術件数が多く、設備やスタッフが充実した医療機関で治療を受けることが望ましいとされています。
当院は、高度な膵臓がん治療を提供する医療機関として、これまでに数多くの手術を行ってきました。肝胆膵外科グループには約10名の医師が在籍し、多職種と密接に連携しながら、チーム一丸となって患者に向き合い、寄り添いながら、高度かつ先進的な膵臓がん治療に取り組んでいます。
膵臓や胆道の手術は極めて難易度が高く、長時間を要するうえに、出血量や術後の合併症リスクが大きいことが課題とされています。特に膵臓がんや胆道がんに対する根治的手術では、高度な技術と繊細なアプローチが求められます。術後の再発を防ぐためには、術後早期に補助化学療法を開始することが重要ですが、負担の大きい手術であるため、回復に時間を要し、手術の侵襲をいかに少なくするかが鍵となります。
私は、高い根治性に加え、出血量や術後合併症率を最小限に抑えるため、より精度の高い手術手法を確立してきました。膵臓の周囲にある神経や線維組織などの微細な構造に着目した手術方法(NFT-based resection)を開発し、高い根治性ならびに手術時間の短縮、出血量の低減、術後の入院期間の短縮を可能にしました。これにより、術後早期の補助化学療法の導入が可能となり、治療成績の向上につながっています。
この高度な手術技術は国内外から高く評価されており、日本のみならず海外からも多くの外科医が東京医科大学病院を訪れ、その手術技術を学んでいます。
精度の高い膵臓がんの手術方法
(NFT-based resection)
我々は膵臓がんに対し、「決してあきらめない治療」を掲げ、たとえ切除不能と診断された場合でも、あらゆる集学的治療を駆使しながら、切除の可能性を追求しています。がんが膵周囲の主要血管に浸潤し、手術が困難と診断された高度進行膵臓がんに対しても、積極的に抗がん剤治療や重粒子線治療を組み合わせ、がんの縮小を目指します。これにより、当初は切除不能と診断された患者さんでも、手術が可能となるケース(Conversion Surgery)が増えてきています。私たちは、患者さんががんを克服する日を思い描きながら、全力で治療に取り組んでいます。
積極的な集学的治療にて癌が縮小し根治手術可能となった例
胆道がんの根治的治療には手術が必要です。手術方法は腫瘍の部位によって異なり、肝門部胆管癌では広範囲な肝切除が必要となるため、より高度な医療技術が求められます。根治手術を行うため正確な癌の進展範囲を調べることに加え、正確な術前検査が必要です。
我々は、安全性と根治性の高い胆管がん手術を行うため、画像支援ナビゲーションを活用し、胆管の正確な切離部位をシミュレーションし肝胆膵外科グループで入念なカンファレンスを行い、詳細な手術方法を決定した上で、精密な手術を実施しています。
患者さんに身体に優しい手術を提供するため、私は膵臓・胆道領域において全国でいち早く、2014年からロボット支援手術に取り組んできました。非常に難度の高い手術ですが、開腹手術で行っていたNFT-based resectionの概念をロボット支援手術に応用し、長年取り組んできた腹腔鏡下手術の技術を活かして膵頭十二指腸切除術でのロボット手術を確立しました。その安全性が評価され、2020年にはロボット支援膵頭十二指腸切除術が保険収載されました。
この手術は非常に高度な手術技術を必要とし、厳しい施設基準を満たした限られた病院でのみ施行が認められています。当院では数多くのロボット支援手術を行っており、私たちが確立した手術技術は、世界的に高く評価され、国内外の多くの医療機関に影響を与えています。
ロボット支援膵臓手術の対象疾患は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、膵神経内分泌腫瘍(pNEN)、充実性偽乳頭腫瘍(SPN)などの低悪性度腫瘍に加え、膵臓がんや遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんなどの悪性腫瘍も適応となります。
膵・胆道合流異常とは、括約筋のない部分で胆管と膵管が合流する先天性の異常です。この異常により胆管が著明に拡張した状態を先天性胆道拡張症といいます。将来的にがんの発生リスクが高いため、胆管を切除し腸へつなぐ手術(先天性胆道拡張症手術)が行われます。
この手術では、胆管に狭窄部分が残ると胆管炎や肝内結石、さらにはがんの発生につながる可能性があります。そのため、術前に狭窄の有無を詳細に評価し、適切な手術計画を立てることが重要です。
我々は、より精密な手術を行うためにバーチャル胆道内視鏡や立体的な画像を作成し、術前シミュレーションを実施し、その診断をもとにロボット支援手術を用いた精緻な手術を行い、胆管狭窄の遺残がない手術を目指しております。 これにより、患者さんが生涯にわたり安心して過ごせるよう高精度な手術に努めています。
初診外来・セカンドオピニオンでは、もし私たちが患者さんやご家族の立場だったら、どのような治療や手術を望むかを考えながら、新しい治療法や手術方法について詳しくご説明します。特に膵臓がんや胆道がんは、早期の治療開始が予後を大きく左右します。治療方法で迷われる前に、紹介状をご持参のうえ、当院へご相談ください。
本治療に関する問い合わせ
お問い合わせ先 | 東京医科大学病院 消化器外科・小児外科 |
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03-3342-6111(病院代表) 受診を希望される方は、外科外来受付へご連絡ください。 ※受診には、他医療機関発行の紹介状をお持ちください。 |
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