肉腫の基礎知識

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肉腫とは?

腫瘍(新生物)には上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍があります。上皮性腫瘍は表皮や消化管、腺組織の性質を具えた腫瘍で、悪性である場合「癌」と言います。これに対し非上皮性腫瘍は、非上皮性間葉組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管、リンパ管、筋、腱、滑膜、骨、軟骨)および外胚葉由来の末梢神経組織の性質を具えた腫瘍で、悪性である場合「肉腫」といいます。癌と肉腫の違いは、由来する、あるいは模倣する組織が上皮性組織であれば癌、非上皮性組織であれば肉腫ということになります。

大腿骨骨肉腫例

腫瘍により骨が破壊されて、骨外に腫瘍が及んでいる。
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原因

明瞭な原因は明らかになってはいませんが、遺伝子の異常が多数報告されているため、遺伝子の変異が原因となっていると考えられています。

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症状

骨に発生する肉腫は、骨の中の限られたスペースで腫瘤が増大することにより、骨組織の内圧が増大して痛みを呈することがしばしばあります。また、正常の骨が肉腫に置き換わってしまうと、力学的に強度が弱くなり、骨折(病的骨折と言います)を来すことがあります。
神経肉腫、滑膜肉腫は一般的に痛みを伴うことが多いですが、軟部肉腫の症状の多くは痛みを伴わないしこりです。痛みを伴わないため放置され、大きな病変になってから受診される患者さんも多くみられます。また、肉腫そのものが痛くなくても、隣接する神経を圧迫して、神経症状を呈することもあります。さらに進行すると表面にある皮膚に病変が浸潤し、皮膚潰瘍を形成することもあります。

未分化多型肉腫例

肩前面に膨隆する大きな腫瘤がみられる。

肉腫の検査と診断

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血液検査

血液検査で異常を呈するのは、骨肉腫でアルカリフォスファターゼが高値になること、ユーイング肉腫でLDHが高値を呈したり炎症反応が時に見られたりすることがあります。これ以外では一般的に血液検査で異常所見がみられる頻度は高くありません。

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画像検査

骨腫瘍では、単純X線像が重要です。骨の表面の骨皮質の破壊像や、骨が溶けているのか作られているのかの違い、辺縁が明瞭なのか不明瞭なのかの所見、腫瘍の浸潤に対応して骨の表面に新たに骨が作られている像(骨膜反応)等の所見が重要です。これらを評価することによりしばしば組織型まで推測することができます。
CT像も重要で、単純X線写真で評価できない微小な変化を見つけられることがあります。
MRI所見では、手術時に切除範囲を決めるために多く用いられます。また病変の性状も評価され、例えば化学療法後、組織が硬い肉腫では、細胞が壊死に陥っていても縮小しないことがありますが、MRIで輝度が変化して効果が分かることがあります。骨シンチ、PET検査は転移の検出に用いられます。
画像検査で必ずしも組織型を推測するまでの所見を得られるとは言えませんが、疾患によっては組織型が推測できることもあります。

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組織検査

最終診断は生検による病理組織検査により確定されます。生検法には、針生検と切開生検があります。摘出して診断を確定するという切除生検という方法もありますが、切除してから高悪性度の肉腫であると診断されると、追加して大きく切除する必要が生じる等のリスクがありますので、当院ではあまり行いません。
適切な治療は正しい診断により行われますが、肉腫の病理組織診断は時に難しいことがあるため、当院では病理医と相談のうえ、診断難渋例はアメリカのMayo Clinicに画像と病理標本を送り、セカンドオピニオンを得ています。これにより診断精度を向上させて、より適切な治療を実施しています。また、滑膜肉腫等の腫瘍では、腫瘍特異的な融合遺伝子異常が報告されていますので、PCR法、FISH法等の検査を行っております。

骨針生検の実際

骨内に針を刺入して組織を採取
骨内に針を刺入して組織を採取

軟部組織針生検の方法

針の一部に窪みがあり、その部位で組織を採取
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肉腫の治療を決める因子

肉腫の治療は、組織型により化学療法あるいは放射線療法の効果が期待できるか、悪性度はどの程度か等により決定されます。手術法は年齢も考慮されます。特に小児や思春期から若い成人の患者さんでは、将来の発育、長期的な影響も考慮し治療法が選択されます。

最終更新日:2023年2月10日

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