皮膚がんとは?
原因
表皮から発生する有棘細胞がん、基底細胞がん、一部の悪性黒色腫(色素細胞のがん)は日光にあたるところに多くみられ、紫外線と関連しています。ウイルス(ヒトパピローマウイルス)に関与している皮膚がんもあります。やけどなど、傷あとを発生母地に皮膚がんが生じることもあります。
症状
全身の様々な場所に発生します。皮膚がんの種類によって色が異なり、赤、紫、黒、肌色を呈します。はじめは湿疹のようにみえることもあります。
進行してくると表面がジクジクしてきたり、急激に盛り上がったり、固くなったりするものもあります。
患者数
皮膚がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり20.0人です。男女比は同じくらいです。年齢が上がるほど人数は増加傾向にあります。(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録2019年全国推計値)
検査と診断
ダーモスコピー検査
表面の変化をより鮮明にみるための診断ツールで、検査用のジェルを塗布し拡大鏡を使用し、10倍程拡大して観察することができます。皮膚がんに特徴的な色、形などをダーモスコピーで確認し、目視での診断精度を上げることが可能です。悪性黒色腫や基底細胞がんの診断に有用です。
画像検査
病変が皮膚の深いところに存在する場合は、超音波やCT、MRIなどの画像検査も行います。辺縁が明瞭なのか不明瞭なのかの所見、病変の形、性状を評価します。
病変が進行している場合は、リンパ節転移、遠隔転移を認める場合があります。その評価は、超音波、CT、PET-CTなどの検査で行います。
(左腋窩のリンパ節転移の所見画像)
病理組織検査
最終診断は生検による病理組織検査により確定されます。皮膚がんは体表からの距離が近いので、局所麻酔を行い、比較的容易に組織検査をすることができます。生検法には、腫瘍の一部を生検する部分生検と、腫瘍全部を取る全摘生検の方法があります。悪性黒色腫の場合は、可能であれば全摘生検を行っています。病変が皮膚の深い場所に存在する場合は針生検を行います。
治療方針の決定
病理診断の結果、がんの進行度(病期、ステージ)、身体の状態を評価し、「皮膚悪性腫瘍ガイドライン」に基づいて治療法を決定します。最近では遺伝子の異常を調べ、治療を決める際に参考にすることもあります。
皮膚がんの種類
基底細胞がん
皮膚がんの中で高頻度に見られるがんで、顔面に好発します。日本人では黒色調を呈することが多いです。ダーモスコピーによる検査が診断に有用です。一部は強い局所破壊性を示しますが、転移は殆どみられません。治療として外科的切除が第一選択となりますが、顔に多く存在するため、欠損部の再建術として局所皮弁術を行うことが多いです。
有棘細胞がん、日光角化症、ボーエン病
高齢者の日光が当たる場所(顔面、頭部、手背)などに多く見られ、表面に角化がある(かさかさしている)のが特徴です。前がん病変の日光角化症も顔面に多く見られます。治療としては外科的治療が第一選択となります。日光角化症では、外用薬で炎症を引き起こし、治療することもあります。進行するとリンパ節・遠隔転移を起こすため、化学療法、放射線治療を行います。
乳房外パジェット病
境界不明瞭な淡紅色斑~褐色斑としてみられ、ときに脱色素斑もみられます。進行すると浸潤、硬結及び結節が生じ、やがてリンパ節転移が生じます。診断の確定には皮膚生検が必要で、切除範囲を決定するために数か所生検を追加する場合があります(マッピングバイオプシー)。治療としては外科的治療が第一選択となります。
悪性黒色腫
皮膚の色を作る細胞である色素細胞のがんで、悪性度が高く転移しやすいです。黒色調を呈することが多く、日本人では足底と指趾爪部に多く見られます。また、日光に当たる部位にも生じます。治療は外科的切除で、腫瘍の深さによってセンチネルリンパ節生検を行います。状況によってはリンパ節郭清術を行う場合もあります。進行期には分子標的薬(がん細胞のみを攻撃する薬)、免疫チェックポイント阻害薬(免疫力を高めてがん細胞を破壊する薬)など患者さんの状態によって治療法を使い分けます。
血管肉腫
軟部肉腫のひとつである血管肉腫は、高齢者の顔面から頭部に好発する血管由来のがんです。悪性度が高く高率に局所再発し、リンパ節、肺に転移することが知られています。病状の進行は速く、早期に診断することが重要で、治療として手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。外来で化学療法(パクリタキセル)、インターロイキン2の局注、動注を行っています。また、分子標的薬のパゾパニブは内服薬であり、高齢の患者さんにも投与がしやすく期待されています。
皮膚悪性リンパ腫
皮膚に存在するリンパ球(ウイルスを殺す細胞)が悪性化したものです。代表的なものにT細胞由来の菌状息肉症があります。進行は緩徐で、長い年月をかけて紅斑期、扁平浸潤期、腫瘍期へと進行し、末期には臓器への転移がみられます。治療として紅斑期から扁平浸潤期まではステロイド外用、narrowband UVBやエキシマライトなどの光線療法が行われますが、腫瘍期以降では、前述の治療では効果が弱く、放射線治療、抗がん剤、分子標的薬、抗体薬による全身療法が行われます。
最終更新日:2023年2月10日