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国内初、ナノナイフによる膵がん治療
~手術による切除不能な局所進行膵がんを対象に実施~

2015.07.24

報道関係者各位

ニュースリリース

2015年7月24日

国内初、ナノナイフによる膵がん治療

~手術による切除不能な局所進行膵がんを対象に実施~
肝がんに続き、膵がんに対してナノナイフ治療を開始

 昨年、肝がんに対する国内第1例目のナノナイフ治療に成功した東京医科大学病院は、今年4月6日、新たに日本ではじめてナノナイフによる膵がん治療を行いました。
 ナノナイフ療法とは、患部に複数本の針を刺し、そこに3000ボルトの高電圧電流を流すことで、針の間にあるがん細胞にナノメートル(10万分の1ミリメートル)の大きさの穴を開け、がん細胞を死滅させる治療法です。
 今回ナノナイフ治療を受けた患者は70代の男性で、ステージ4Aの局所進行膵がん。1年前に診断され他臓器への遠隔転移は見られないものの、膵臓の周囲にある血管にがんが浸潤しているため、切除手術が不可能でした。手術ができるようにするため、放射線療法と抗がん剤の併用治療(化学放射線療法)を受けていました。しかし腫瘍は一進一退で切除手術はできませんでした。そこで、血管に浸潤しているがん細胞を死滅させ切除手術ができるようにする目的でナノナイフ療法が用いられました。
 今回の治療を行ったのは、当大学病院の消化器内科と消化器外科・小児外科の合同チーム。ナノナイフ治療には、開腹して行う方法と皮膚の上から経皮的に行う方法があります。膵臓は十二指腸などの他臓器に囲まれたわかりにくい位置にあり、しかも、近くには太い動脈もあるなど、針を刺すリスクも考慮し、開腹してナノナイフ治療を行いました。
 その後の検査では膵がんの縮小効果が確認されており、今後、血管に浸潤しているがん細胞が死滅した段階で、膵がんの切除手術を行う予定です。

がんの局所療法に威力を発揮するナノナイフ治療の利点と将来性

 ナノナイフ治療の大きな特徴は、血管や膵液を流す膵管などの脈管には障害を与えずに、がん細胞を死滅させるという点です。そのため、太い血管や膵管のそばにあるがんを治療する際、血管を壊して出血させてしまう、あるいは膵菅が壊れて膵液が漏れて合併症を起こすといった心配がありません。
 こうしたすぐれた利点から、欧米では既に2008年頃から肝がんをはじめ、膵がん、前立腺がん、腎がん、乳がん、肺がんなどの治療にナノナイフが用いられています。そこで、肝がんに続いて膵がんへのナノナイフ治療を日本ではじめて行った当大学病院では、他の臓器への応用を目指すとともに、近い将来の保険適用を目指して、ナノナイフ治療の先進的な取組みをさらに進めてまいります。

●ナノナイフ治療とは

 ナノナイフ治療は、患部を取り囲むように太さ19ゲージ(外径1.1ミリメートル)・長さ15センチメートルの針電極を刺しします。その先端1~2センチメートルが通電する電極となります。
 治療の際、高い電圧で通電するため針の間以外にも電流が流れ、全身の筋肉がけいれんを起こします。そこで全身麻酔を行い、筋弛緩剤を注射して筋肉の収縮を抑えます。また、心臓に電流が流れることで不整脈が起きるのを防ぐため、心電図を取りながら不整脈が起きにくい心臓周期の「不応期」に電流を流します。
 こうした措置を行ったうえで、電流発生器で制御しながら、3000ボルトという高電圧の直流電流を1万分の1秒という極めて短時間流し、がん細胞にナノサイズ(1ナノメートル=10万分の1ミリメートル)の孔を開けます。
 孔が開いたがん細胞は死滅し、体内で異物を捕食する細胞・マクロファージが死骸を処理します。

●がんの局所療法におけるナノナイフ治療の有効性

 ナノナイフ治療の適応対象は、がんの進行がステージ4A、つまり、他臓器やリンパ節への遠隔転移は見られず比較的局所に留まっているものの、手術での切除が困難な「切除不能局所進行膵がん」の患者です。
 切除不能局所進行膵がんの治療法は、化学放射線療法で手術できるようになるか、できなければ抗がん剤を続ける以外に治療法がありませんでした。
 こうした局所進行がんの患部に電極を刺して治療する「局所療法」として、これまで高周波でがんを焼き切る「ラジオ波焼灼療法(RFA)」が肝がんの治療に広く使われています。ラジオ波焼灼療法は膵がんにも試みられましたが副作用が強いため現在は使われていません。両者の大きな違いは、ラジオ波焼灼療法が電流を流して温度を上げてがん組織をやけどさせるのに対して、ナノナイフ治療は電気を流すだけで温度は上昇せずがん細胞に小孔を空けて細胞死をきたす点です。
 膵臓などの臓器は血管などの管を形づくる「間質」と、実際に仕事をする細胞で構成される「実質」でつくられています。ラジオ波焼灼療法の場合、間質も実質も熱でダメージを受けるため、がんの近くに血管や膵液を流す膵菅などがあると、それらが壊れて出血を起こしたり、膵液が漏れて臓器が消化されて膵炎などの合併症を起こすことがあります。
 一方、ナノナイフ治療の場合、細胞は死滅するものの間質は影響を受けません。つまり、血管や膵管が壊れて出血や膵液が漏れ出すことがありません。
 また、がんが太い血管の近くにある場合、ラジオ波焼灼療法を行っても血流の冷却効果でがん細胞の温度が上昇しません。そのため、治療効果が思うようにあがらず再発率が高くなってしまいます。しかし、温度に関係のないナノナイフ治療では、太い血管の近くにあるがんの治療も効果的かつ安全に行うことができます。
 こうしたことから、ナノナイフ治療は、膵がんなどの血管・膵管などの脈管に浸潤したがんへの応用が期待されています。

●東京医科大学病院におけるナノナイフ治療の課題と取組み

 今回の局所進行膵がんに対するナノナイフ治療は、血管の周りに浸潤しているため手術で切除できないがんについて、血管の周りのがんを死滅させることで手術ができる状態にするものです。今後は患者の予後の経過を診ながら、切除手術を行う予定です。
 また、切除不能な膵がんに対してナノナイフ治療と化学療法を併用することにより、長期の予後が期待できると考えています。
 東京医科大学病院では、今回のナノナイフ治療を含め、6例の膵がんに対し臨床研究を行うことについて大学および病院倫理委員会の承認を得ています。今後第1例目と同様、開腹手術をまじえた治療を2例、そして、開腹せずに行う治療を3例行うことになっています。
 そのうえで、既にナノナイフ治療が積極的に行われている欧米の治療実績を踏まえ、日本においても先進医療の承認を取ること、さらには保険適用を目指しています。同時に、肝がん、膵がんに続く他の臓器のがんへの応用に向けた取組みを進めています。

以上

リリースに関するお問い合わせ先

東京医科大学病院
経営企画・広報室 広報担当

■消化器内科
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/syoukakinaika/

■消化器外科・小児外科
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/syoukakigeka/

●消化器内科「国内第1例目のナノナイフ治療に成功 (肝がん)」のリリースはこちら

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