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熱中症の重篤化に関与する遺伝子のタイプを確認

2011.07.29

報道関係者各位

ニュースリリース

2011年7月29日

熱中症の重篤化に関与する遺伝子のタイプを確認

炎天下や高温環境などによる外因性疾患として考えられてきた熱中症
CPTⅡが熱不安定型になる遺伝子タイプ(SNP)保有者を熱中症重症化患者の45.5%で確認

 東京医科大学・救急医学講座(行岡哲男主任教授)では、徳島大学・疾患酵素学研究センター(木戸博教授)との共同研究で、熱中症の重篤化に特定の遺伝子のタイプが関与していることを示すデータを得ました。この結果は、日本救急医学会雑誌22巻7号に掲載されます。
 高体温においてATP産生が低下することにより、細胞内での"エネルギー危機"をもたらす体質を持つ人が日本では13.9%~19.8%の範囲で出現しており、これは、遺伝子を原因とする熱不安定型CPTⅡの存在によるものであることが徳島大学・疾患酵素学研究センターにおいて見出されていました。
 このほど本学救急医学講座では、下記のように、重篤化した熱中症(熱射病)患者11人中5人(45.5%)が、高体温でATP産生が低下する場合と同じ形の遺伝子のタイプを持っていることを確認しました。
 これまで熱中症は、炎天下や高温環境などによる外因性の疾患と考えられていましたが、遺伝子のタイプによっては、通常よりも熱中症が重症化しやすくなることを示唆しており、内因性の要素があるということになります。

SNP:「一塩基多型(SNP : Single Nucleotide Polymorphism)」。ある生物種集団のゲノム塩基配列中で、一つの塩基だけが置き換わっており、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時こう呼ばれる。

 

 
1.高体温に弱い体質の存在

 動物の細胞は、エネルギーを使ってその機能を維持しています。このエネルギーは、栄養素から取り出してATPを介してはじめて利用することができます。このATPは、細胞内にあるミトコンドリアで主に作られています。
 ATPは、3大栄養素の一つである脂肪を、脂肪酸という物質としてミトコンドリアに入れることではじめて産生されます。この脂肪酸をミトコンドリアに取り入れる役割を担うのが CPTⅡという酵素です。このCPTⅡが遺伝子のタイプによっては、体温40℃以上でその機能が低下する熱不安定型のたんぱく質となることを、徳島大学・疾患酵素学研究センターの木戸博教授らの研究グループが見出していました。この遺伝子のタイプは日本では13.9%~19.8%に確認されています。

2.CPTⅡの機能低下による影響

 CPTⅡが熱不安定型になる遺伝子のタイプを持つ人では、体温40℃以上が続くとCPTⅡの機能が低下します。その結果、脂肪からATPを産生し、エネルギーを確保することが難しくなります。特に、毛細血管の壁である血管内皮細胞は三大栄養素である、糖・アミノ酸・脂肪のうち、そのエネルギーの70%を脂肪に頼っており、細胞は深刻な"エネルギー危機"の状態に陥ります。血管内皮細胞が壊れると、脳では意識障害やけいれんに繋がる可能性もあり、脳だけでなく全身の血管内皮細胞の障害により、多臓器不全のリスクが高くなります。

3.重症化した熱中症患者でも特定の遺伝子タイプを高頻度で確認

 熱中症で、「体温40℃以上」で、かつ「意識障害またはけいれん」の症状があった重篤患者(熱射病患者)の遺伝子を解析したところ、CPTⅡが熱不安定型のたんぱく質となる遺伝子のタイプが通常(13.9%~19.8%)よりも高い確率(11人中5人:45.5%)で確認されました。
 なお、インフルエンザで40℃以上の高体温が続き、インフルエンザ脳症として重篤化した人の遺伝子タイプの解析においても、CPTⅡが熱不安定型のたんぱく質となる遺伝子のタイプを持つ場合が46.2%と高頻度で確認されています。

4.熱不安定型CPTⅡとなる遺伝子のタイプ

 たんぱく質としてのCPTⅡを作る遺伝子は「CPT2」と表記されますが、これは第1染色体に存在します。このCPT2の1055番目の塩基がチミンからグアニンに置き換わり([1055T>G]と表記)、その結果、CPTⅡのアミノ酸が1つ変化([F352C]と表記)し、熱不安定型の酵素([1055T>G/F352C])となります。
 また、CPT2の1102番目の塩基がグアニンからアデニンに置き換わる場合(1102G>A と表記)、このSNP単独では高熱によるCPTⅡの酵素活性低下は起こりませんが、[1055T>G/F352C]と重なることで、高熱で酵素活性が著しく低下することが分かっています。

以上

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