検査と診断

印刷用PDF
1

肺がん検診

肺がん検診の対象者は40歳以上であり受診間隔は年に1回、主な検診内容は問診、肺X線検査でハイリスク患者の場合は喀痰細胞診(対象者は、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人。)などがあります。一次検診で「異常あり」と判定された場合には精密検査(二次検診)を受けるように指導されます。

また人間ドックで胸部異常陰影が発見される場合、他の疾患で医療機関での検査中に偶然に胸部異常陰影を指摘される場合、咳や痰、血痰、呼吸困難といった臨床症状がある場合などが肺がん発見のきっかけになります。

2

肺癌検査の種類

検査の種類

1胸部単純X線検査

簡便で広く普及した検査法であり、最初に行われる検査となります。放射線被ばく量も比較的少なく、我が国においても肺がん検診で用いられています。ただし中心型肺癌(太い気管支の病変)や濃度の淡い陰影、肋骨や心臓、横隔膜と重なる陰影などは発見しにくいこともあります。

2胸部CT検査

体の各部位の断面像をそれぞれ描出することで、がんの大きさや性状、周囲の臓器への広がりなど、胸部単純X線よりも多くの情報が得られます。胸部単純X線検査で見つかりにくい陰影も見つけやすく、肺癌を検出する有力な検査方法です。得られた画像から立体構成を表現することも可能です。ただし放射線被ばく量は胸部単純X線よりも多くなることなどは注意を要します。

3喀痰細胞診

非侵襲的な中心型早期肺癌(太い気管支に発生した早期がん)の唯一のスクリーニング法です。通常3日連続で痰を採取し、病変からがん細胞がはがれ落ちて痰に混ざって出てくるのを検出する検査です。1回のみの検査ではがん細胞を発見しにくいため、3回続けて検査を行うことが推奨されています。

4気管支鏡検査

気管支鏡と呼ばれる内視鏡を口または鼻から挿入して気管支の中を観察し、がんが疑われる部位の組織や細胞を採取して調べます。検査前に喉や気管に局所麻酔を十分に行った上で行います。内視鏡で直接見ることができない陰影に対してはX線透視下に経気管支肺生検(TBLB:Transbronchial lung biopsy)を行います。近年では超音波ガイド下に検査を施行することや、ナビゲーションシステムを併用することで診断率は向上する傾向にあります。また超音波を用いることで縦隔リンパ節の生検も気管支鏡下に行うことが可能になりました。頻度はあまり高くないものの出血や肺炎、気胸、局所麻酔中毒などの合併症が起こり得ます。また、喀痰細胞診でがん細胞が検出されたものの、CTや通常の気管支内視鏡で腫瘍が確認できないような太い気管支の上皮内がん(ごく初期の段階の中心型早期肺癌)に対しては自家蛍光気管支内視鏡を使用して病変の観察、生検を行います。

5経皮的肺針生検

気管支鏡検査が難しい場合や行っても診断ができなかった場合に行います。皮膚や胸膜に局所麻酔を施行した後にX線透視やCTガイド下に確認しながら、皮膚から細い針を肺に刺して組織を採取して調べます。数%気胸という合併症が起こる可能性もあり、最近では気管支鏡検査を確定診断のための検査の第一選択とすることが増えています。

6PET検査

FDG(18Fフルオロデオキシグルコース)を静脈注射して撮影するポジトロン断層撮影(PET:positron emission tomography)であり、腫瘍内での糖代謝の亢進を検出して画像化したものです。最近ではPET検査にCTを組み合わせたPET/CTが広く行われており、肺がんは日本における2013年のFDG-PET検査件数の疾患別第一位となっており、全体の約4分の1を占めています。病変へのFDG集積を表すのにSUV(standardized uptake value)という指標があり、全身に均一にFDGが集積した場合をSUV=1として、病変部では最も集積の高い値 SUV maxをよく用います。FDG集積によってリンパ節転移や全身への転移の有無を確認します。脳はブドウ糖代謝が盛んなためPET検査では脳転移の有無は確認できません。がんではなく炎症が起きている場所にも集積する、いわゆる「偽陽性」の場合もあります。

7その他の全身検索検査

肺がんは、脳や骨、肝臓などに転移することがあるので、脳MRIや腹部CT・超音波、骨シンチなどで肺以外の全身検索を行い転移性病変がないかを確認します。

8腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが存在するときにがん細胞によって異常に産生される特徴的な物質(たんぱく質や酵素)で、がんの種類に応じて多くの種類があり、血液検査により量を測定することでがんの進行の参考とする検査です。この検査だけでがんの有無を確定できるものではなく、がんが体内に存在しても腫瘍マーカーが異常値を示さないこともある一方、がんが存在しなくても異常値を示すこともあります。
肺がんの診断においては補助的な役割として行い、経過観察で用いられることもあります。非小細胞肺がんの腫瘍マーカーとしては、腺癌で高値を示すことが多いCEA、SLX(Sialyl Lewis X)、扁平上皮癌で高値を示すことが多いSCC、CYFRA21-1などが用いられており、小細胞肺がんの腫瘍マーカーとしては、NSEとproGRPがよく使われます。

最終更新日:2023年2月10日