手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖

優れた機能で術者をサポート手術の安全性向上と低侵襲を実現手術支援ロボット「ダヴィンチ」

万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ。その名を冠した医療ロボットが今、手術の現場に大きな変革をもたらしています。患者に触れず、医師が患部の立体画像を見ながら遠隔操作でアームを動かす、ハイテク技術を駆使した画期的な手術法。すでに世界での臨床実績は年間約28万例、国内でも積極的な導入が進む手術支援ロボット「ダヴィンチ」を徹底解剖、そのすべてを語ります。

世界32カ国が導入臨床使用の累計は78万例超

ダヴィンチ

ダヴィンチ

アメリカではすでに約1,500台が稼働

手術支援ロボット「ダヴィンチ」、正式名称「ダヴィンチサージカルシステム(da Vinci Surgical System)以下ダヴィンチと略」は、科学技術にも優れた足跡を遺し、万能の天才と称せられたレオナルド・ダ・ヴィンチの名に由来しています。アメリカ軍が異国で傷ついた兵士を遠隔治療する目的で、医療機器メーカーに開発を依頼したのがきっかけでした。20世紀末に「ダヴィンチ」第一世代が完成し、アメリカで2000年に胆嚢摘出手術で最初のFDA※1の承認を受けました。その後10年余りの間に飛躍的に導入が進み、現在はアメリカ国内で約1,500台が稼働しています。ヨーロッパでも1999年にCEマーク※2を取得して、イタリアをはじめ、ドイツ、フランスなど22カ国で約380台の導入が進み、世界では32カ国で「ダヴィンチ」手術が施行され、臨床使用の累計はすでに78万例を超えています。

  • ※1 FDA…アメリカ食品医薬品局。アメリカ合衆国の政府機関のひとつで、新規の医療機器などが市場に参入する際に、安全性と有効性を確認する。
  • ※2 CEマーク…欧州連合(EU)地域に販売される指定製品に添付を義務付けられている基準適合マーク。

世界の導入実績(2011年12月末現在)

前立腺全摘除術、子宮摘出術で「ダヴィンチ」手術が主流に

「ダヴィンチ」手術がもっとも進んでいるアメリカでは、2001年に根治的前立腺摘除術のFDA承認を得た後、前立腺全摘除術では開放手術に代わって「ダヴィンチ」手術が主流をなし、約85%を占めるまでに至っています。大病院のみならず、すでに多くの中規模病院でも「ダヴィンチ」を導入。現在では前立腺全摘除術を超える症例数で子宮摘出術が「ダヴィンチ」手術で用いられているほか、呼吸器外科、消化器外科、耳鼻科など、適応可能領域も増え、「ダヴィンチ」手術の可能性はさらに広がっています。アメリカでは、今や「ダヴィンチ」手術は、開放手術、鏡視下手術と並ぶ術式として、広く一般的な手術として人々に受け入れられています。

ダヴィンチ手術の実験されている症例(アメリカ)

アメリカにおける導入実績(1999~2011)

アジアでは日本・韓国を筆頭に中国、インドも積極導入

アジアにおいて「ダヴィンチ」の導入当初(2005年)から積極的に取り組んだのが韓国でした。先進医療への保険制度が充実していることも追い風となり、3,000床クラスの総合病院で次々と「ダヴィンチ」が導入され、2011年に35台が稼動しています。日本はその韓国をわずか数カ月で追い越し39台を所有し、それに次いでインド、中国でも、それぞれ20台、14台を所有。さらに台湾、シンガポール、マレーシアなど9カ国で合わせて131台が導入されています。「ダヴィンチ」の機運が高まりつつあり、アジアにおける「ダヴィンチ」手術の広まりは、今後さらに加速していくことが予想されています。

(2011年12月末現在)

ヨーロッパにおける導入実績(1999~2011)

アジアにおける導入実績(1999~2011)

日本のロボット支援手術を牽引する東京医科大学病院

ダヴィンチ

2009年の薬事承認で国内でも導入が加速

日本国内において「ダヴィンチ」が最初に導入されたのは2002年。しかしロボット支援手術への認識不足や薬事許可が得られないなどの背景もあり導入が進まず、その取り組みは欧米から10年遅れているといわれていました。しかし2009年に国内で初の薬事承認が得られたことが弾みとなり、さらに欧米ですでに高い成果を出している「ダヴィンチ」手術に対する医療関係者の認識も深まりつつあり、国公立病院、私立大学病院、民間病院など、近年は積極的に導入する医療機関が増加しています。国内での「ダヴィンチ」導入数は2011年12月末には韓国を抜いて、アジアで最も多くの「ダヴィンチ」を所有する国となっています。

東京医科大学病院のロボット支援手術件数と日本国内での比率(円グラフ) 65% 東京医科大学病院:651件 2011年9月現在

国内の先がけとして「ダヴィンチ」手術に取り組む

東京医科大学病院では2005年に「ダヴィンチ」を導入し、心臓外科で冠動脈バイパス手術を実施。この手術は国内におけるロボット支援手術の幕開けとなりました。さらに国内で最初の「ダヴィンチ」手術による前立腺全摘除術を手がけるなど、国内のロボット支援手術を牽引してきました。泌尿器科ではすでに450件以上の症例数を数えるなど実績を積みながら院内の体制を整え、産科・婦人科、呼吸器外科・甲状腺外科、消化器外科・小児外科、耳鼻咽喉科などでも、「ダヴィンチ」手術の積極的な取り組みがなされています。

東京医科大学病院のダヴィンチcertificate保持者数と日本国内での比率(円グラフ) 25% 東京医科大学病院:55名 2011年9月現在

国内の症例数の6割以上と群を抜く実績

東京医科大学病院では現在、国内の医療機関として唯一、3台の「ダヴィンチS」を所有。これまで国内で行われた「ダヴィンチ」手術約1,000件のうち651件が当病院で行われています。また「ダヴィンチ」手術に携わることができるcertificate取得者は国内で220人。そのうち55名が当病院の医師で、これは全国の4分の1を占める人数です。さらに2011年には東京医科大学病院内に国内初の『ロボット手術支援センター』を設置するなど、日本のロボット支援手術のリーダー的な役割を担い、その普及に力を注いでいます。

(2011年9月現在)